後立山(長野/富山) 針ノ木岳(2820.7m)、蓮華岳(2798.7m) 2022年6月4日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 1:51 扇沢市営駐車場−−1:57 登山口−−2:18 車道を離れる−−2:58 大沢小屋−−3:07 雪渓に乗る−−4:20 ヤマクボ沢出合−−5:22 2670m鞍部−−5:44 針ノ木岳 6:13−−6:41 針ノ木峠−−7:41 蓮華岳 8:04−−8:41 針ノ木峠−−9:15 夏道分岐−−9:24 最終堰堤−−9:31 スノーブリッジで右岸へ渡る−−9:36 林道−−9:47 車道−−9:58 登山口−−10:04 扇沢市営駐車場

場所長野県大町市/富山県中新川郡立山町
年月日2022年6月4日 日帰り
天候快晴
山行種類残雪期の一般登山
交通手段マイカー
駐車場扇沢駅直下の有料駐車場より下に市営無料駐車場あり。ただしハイシーズンには早朝に満車になるので注意
登山道の有無あり
籔の有無藪漕ぎのレベルではないが、大沢小屋手前で笹が登山道にはみ出した区間があり、雨直後や朝露に濡れた時間に通過すると体に触れてびしょ濡れになるのでゴア必携
危険個所の有無無し
山頂の展望針ノ木岳、蓮華岳とも晴れれば大展望
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コメント残雪期を利用してヤマクボ沢経由で針ノ木岳へ。冷たい風は吹いていたが天候は最高で展望を堪能できた。雪渓へは冬道を利用する予定だったが林道入口を誤認して夏道経由で雪渓に乗った。ヤマクボ沢は稜線まで雪がつながっていた。針ノ木岳〜針ノ木峠間は針ノ木峠付近を除き夏道は残雪に埋もれて稜線北側直下をトラバース。蓮華岳側は逆に雪は無くアイゼン不要だった。帰りは夏道ではなく篭沢沿いの冬ルートを初めて下ったが、地形図の車道から先に延びる破線は左岸に移るがそこに橋は無くスノーブリッジが無ければ通行不可能であり、トレースはほぼずっと右岸側だった




ゲート横から登山道へ 冬道入口を逃して夏道経由に変更
今シーズン初めてのサンカヨウ 鳴沢。カチカチに凍ってツルツル
大沢小屋 標高1740m付近で夏道から雪渓に下った
3時50分の東の空。徐々に明るくなってきた 標高2080m付近。4時前でライト不要に
標高2200m付近から針ノ木峠を見上げる ヤマクボ沢出合からヤマクボ沢を見上げる
ヤマクボ沢に入って標高2320m付近 4時半過ぎに日の出を迎える
雪面がモルゲンロートに染まる 標高2470m付近。かなりの傾斜
左には蓮華岳 標高2550m付近。鞍部が見えた
2670m鞍部で県境稜線に出た 2670m鞍部から見た立山、剱岳
スバリ岳への登り 針ノ木岳への登り。ガレや岩ばかりで雪は無い
針ノ木岳山頂 針ノ木岳から見た針ノ木雪渓。2人が写っている
針ノ木岳から見た360度パノラマ展望写真(クリックで拡大)
針ノ木岳から見た立山、剱岳
針ノ木岳から見た後立山
針ノ木岳から見た頚城山塊
針ノ木岳から見た八ヶ岳
針ノ木岳から見た南アルプス(クリックで拡大)
針ノ木岳から見た木挽山 次は蓮華岳へ向かう。最初は無雪
すぐに残雪登場。アイゼン装着 標高2760mで雪壁登場
ここだけはバックで下った。南から迂回可能 正面のピークから稜線北側をトラバースする
トレースあり それなりの傾斜でピッケルが必要
一度傾斜が緩むが再び急斜面のトラバース 振り返る
安全地帯。この先はもう危険はない 針ノ木峠反対側の蓮華岳側。夏道は雪の無い場所に付いている
針ノ木峠から針ノ木岳方面を見上げる 針ノ木峠
針ノ木峠から針ノ木雪渓を見下ろす 蓮華岳方面。雪は登らず右の無雪帯へ
針ノ木岳とは対照的に夏道には雪は無い 新雪が残っていた
今年初のコケモモの花 標高2630m付近から針ノ木岳を振り返る
標高2680m付近 2754m峰から見た蓮華岳
2750m峰から見た蓮華岳 2730m鞍部から見た大沢
蓮華岳西の肩(2790m)から東を見ている
蓮華岳西の肩から見た針ノ木岳
蓮華岳西の肩から見た360度パノラマ展望写真(クリックで拡大)
蓮華岳山頂標識(三角点西側) 三角点西側から見た北葛岳、七倉岳
蓮華岳山頂(2798.7m三角点) 蓮華岳山頂から西を見ている。肩が展望を邪魔している
蓮華岳山頂から見た360度パノラマ展望写真(クリックで拡大)
蓮華岳山頂から見た常念山脈、槍穂
蓮華岳山頂から見た頚城山塊、高妻山
蓮華岳山頂から見た奥秩父
蓮華岳から針ノ木峠へ下る 正面に針ノ木岳
蓮華岳へ向かう登山者とは計4人すれ違った ヤマクボ沢を登る登山者。計4人が見えた
すれ違った3人組がデポしたアイゼン 針ノ木小屋(今シーズンはまだ開業前)を見下ろす
すれ違った軽装の単独男性のザック。トレランかと思った 針ノ木峠
針ノ木峠から針ノ木峠雪渓を見下ろす 針ノ木岳を目指す登山者
下方に登山者の姿あり ヤマクボ沢を登る登山者の姿が分かる
ヤマクボ沢出合。少なからずスキーヤーもいた 続々と登っていく
雪渓は風が無く暑いくらい 柏原新道はまだまだ無理そう
団体様が雪上訓練中 標高1780m付近。左岸に夏道が登場
標高1750m付近。初めて流れが顔を出す 往路で雪渓に出た場所(標高1740m付近)
冬ルートを下ることにして雪渓を直進 標高1720m付近。流れが左岸に接するので左岸に上がる
灌木が多いが左岸には何となく踏跡あり 雪が増えると雪の上に乗る
最初(最上流)の堰堤(標高1680m付近)は左岸から越えた 大半の登山者は雪が残る右岸を越えるようだ
標高1680m付近.。相変わらず灌木藪っぽい左岸 標高1650m付近.。廃林道っぽくなると目印登場
標高1650m付近.。おそらく廃林道 標高1620m付近.藪を避けて雪に乗る。
スノーブリッジで右岸に渡ると明瞭なトレース登場 スキーヤーがデポした登山靴か?
標高1600mの堰堤 堰堤を越えると最後の残雪
標高1590m付近。明瞭な林道 登山道の標識を初めて見る
たぶんノウゴウイチゴ おそらくキジムシロ
蕾だけどベニバナイチヤクソウかなぁ タチツボスミレっぽい
タンポポ 関電トンネルに繋がる車道に合流
歩いてきた林道 林道入口の標識
ヤマルリソウとのこと
関電関係車両。トンネルから下っていった
ニリンソウ 扇沢駅
登山口 ゲート
扇沢駅入口 有料駐車場。最上段が埋まっている程度
蘭の仲間だと思う。ノビネチドリか? スズラン。自生したものか植えたものか不明
おそらくクルマムグラ 市営第一駐車場(無料)。満車だった


 先週末は土曜日を含めて下界は天候は良かったが、山の上は風が強かったためお手軽な蝶ヶ岳にしたのに雲が多くて展望はあまり楽しめなかったし寒かった。今週の予報は先週より良くて土曜日は山の上でも好天が期待できそう。風はやや強そうだが先週のように稜線で雲が湧くほどではなさそうだ。

 行先だが今年に入って何度か狙っていた針ノ木岳とした。正確には針ノ木岳と蓮華岳で、登りのルートに大沢を選んで蓮華岳に直接登りたかったのだが、季節が進んで大沢の雪がつながっているか確信が持てない。私の場合はアルプス級の山の場合は夜中出発で真っ暗な中を登るので往路で大沢の状況を下から見ることは不可能であり、安全を見て往路は針ノ木雪渓を登ってヤマクボ沢から針ノ木岳北鞍部に出て針ノ木岳山頂に達するルートとした。ネットの記録でヤマクボ沢はまだ雪がつながって藪漕ぎ不要とのことだ。

 問題は篭川沿いの冬ルートが今でも使えるかどうか。ネットの記録では先週末に登った記録ではもう残雪状況が微妙で今週末は通行可能かどうかとの表現であった。ここの冬ルートは歩いたことがなく様子は全く知らないが、地形図では林道が篭川左岸から右岸へ通っており、これが冬ルートらしい。この林道は途中で破線に変わり左岸へ渡り返しているが、ここに橋があるかどうか怪しい。おそらくここに雪が残って川を渡れるかどうかがキモであろう。もしくは破線は無視してそのまま右岸を遡上し続けるかだが、雪が無い場合にそれが可能な地形なのか分からないのが痛い。まあ、何とかなるだろうと基本的には冬ルートで行くことにした。

 長野市から扇沢まで1時間強しかかからないので無料の市営第一駐車場到着は午後8時過ぎ。既に車があり容量の2割くらいが埋まっていた。私のように車中泊の人もいるだろうが、大半はアルペンルートに入って宿泊の観光客だろう。最も奥に近い位置で既に駐車している車に挟まれたスペースに駐車。これで両側に夜中に新たに車が入ってくることがないので静かに寝られる。

 翌朝は午前1時に起床。飯を食って準備をして2時前に出発。今回は雪の急傾斜の登り下りとトラバースがあるので軽ピッケルと10本爪アイゼンとした。針ノ木雪渓から蓮華岳だけならピッケルは不要だろうが。夜中2時前後でも次々と車が上がってくる。私と違って遠方からやってきた人だろう。これから仮眠だろうが私はこれから出発だ。当然ながらまだ真っ暗で真夏と違って他に歩いている人は皆無。この時期は真っ暗な時間帯から歩く登山者はほとんどいないのが通常である。

 冬ルートの林道分岐を探しながらであるため今回は車道をショートカットする登山道をずっと歩いていたのではダメで、地形図によると2回のショートカット後は車道を歩く必要がある。2箇所のショートカットが終わって林道を進んで林道入口を発見したが、その標高は1450m。地形図では標高1500m付近のはずだ。出発時に駐車場で高度計を校正したので50mも誤差があるとは考えられず、目的の林道はもっと上だと思って車道を進んだが車道はどんどん北へとずれていく。おそらく次のカーブが目的の林道入口なのだろうと思ってショートカットの登山道が現れたのでそちらに入って再び舗装道路に出て左に林道が登場しないか観察しながら歩いていたら夏道入口に到着してしまった。いつの間にか冬道入口の林道を越えてしまった。こうなったらわざわざ戻るよりもこのまま夏道を進んだ方がいいだろうと判断して夏道へ入った。

 帰りに判明したことだが、途中で見た林道が目的の冬道入口で、誤った判断の元となった高度計の誤差は私の校正ミスだった。扇沢の標高は1350mだとばかり思っていたら地形図を見ると1400mでちょうど50mの差であり、林道入口の正しい標高はまさに1500mぴったりであった。

 夏道は入っていきなりサンカヨウの花が咲いていたので真っ暗だが写真撮影しておく。夏道は予想通りほとんど雪は無く、鳴沢横断で僅かに雪が現れて赤沢では沢全体がツルツルに凍った雪に覆われてアイゼンを履こうかと思ったが、この先は絶対に雪は無いだろうからと登山靴のまま滑りやすい雪を横断し、予想通り対岸より先には雪は無かった。閉じた大沢小屋を通過しても残雪は僅かで明瞭な夏道を歩く。最近取り付けられたような真新しいピンクリボンの目印が続いているが、この道は何度も歩いているので目印は不要だ。

 夏場に雪渓に下る場所よりも手前から雪渓が登山道に接近したので、標高1750m付近で沢に下る枝道に入って雪渓に乗る。針ノ木雪渓はツルツルに凍って締まった雪でありアイゼン装着。これなら全く沈む心配はない。雪渓を吹き降りる冷たい風が無いので半袖+腕カバーでも寒くはない。上空は満天の星空で冬なら放射冷却で冷えそうだが、今はもう梅雨入り前のシーズンであり冷え込みはほとんどない。

 雪渓は広くてどこを歩くのか分かりにくいが、結論としてはどこでもいいのであった。ただし1箇所だけ流れが顔を出している部分があるのでそこだけは避ける必要がある。まだ残雪量が豊富であり雪が薄くて踏み抜いて沢に落ちるような場所は無い。あまり端を登ると枝沢に引き込まれる可能性があるので谷のど真ん中付近を歩く。雪渓に乗ったばかりの場所では僅かに人が歩いた形跡が残っていたが、高度が上がるとほとんど跡は分からなくなった。私が歩いた跡はこの雪の固さでは全く残らないであろう。当然ながら前を見ても後ろを振り返っても登山者の光は全く見えない。

 針ノ木雪渓は針ノ木峠直下を除けはそれほど傾斜はないので足に優しい。先週は土日とも歩いたので疲労の蓄積が心配であったが、全く影響が残っていないわけではないが最近の中ではマシな方だった。

 ヤマクボ沢出合が近付く頃には徐々に明るくなり、立木皆無の雪渓では午前4時前にライト不要になった。東の空は徐々に赤みを増してきたが日の出まで30分くらいあるだろう。この時刻なら扇沢を出発する登山者がいるはずだが、私より2時間遅れなので針ノ木岳で会うことは無いだろう。

 ヤマクボ沢出合で右に折れてヤマクボ沢へ入る。ここは1回登ったことがあるが途中はかなりの傾斜であり、ここでピッケルを手にする。最近付けられたと思われるトレースが2人分ほど判別可能。この時期限定のヤマクボ沢は歩く人が多いだろうからなぁ。今の時期に針ノ木峠経由で針ノ木岳に登る場合、夏道はほぼ残雪に埋もれて使えない。かといって尾根直上は巨大な岩が聳えているのでこれまた使えず、雪が付いた北側の急斜面をトラバースする必要があり、それと比較すればヤマクボ沢の方が滑落のリスクは低い。

 とは言えヤマクボ沢の傾斜は針ノ木雪渓よりきつく、特に標高2400〜2550m付近は地形図から読み取れる傾斜よりも急に感じる。私が登った時間帯は雪が固く締まってアイゼン、ピッケルとも歯の先端しか刺さらないほどであったので、登りはまだいいが下りだったらかなり怖い思いをしただろう。そろそろ日差しが強くなってきて顔が日焼けしそうなので日焼け止めを塗った。ヤマクボ沢は東に開けて朝日が良く当たるので、午前中の早い時刻には雪の表面が適度に緩んで今の時間帯よりも安全に歩けるようになるだろう。

 標高2550mを越えると傾斜が緩んでハイマツが出たエリアが登場。左右どちらも雪がつながっていそうだが谷の真ん中に近い左を通過すると、前方には目論見通り2670m鞍部が見えてきた。鞍部までずっと雪がつながっていて藪漕ぎの心配はない。鞍部直下の傾斜が急だが距離は短く、まっすぐ登って県境稜線の2670m鞍部に飛び出した。

 鞍部に出て初めて西側の展望が開けて立山、剱岳が見える。雪の付き方からしてここ数日の間に新雪が降ったようだ。県境稜線は西寄りの冷たい風がやや強く、防寒装備を装着。県境稜線上には雪は見られないのでアイゼンは脱ぐ。この先は山頂まで夏道歩きだ。

 針ノ木岳山頂まで登山道上には全く雪は無く、積み重なった石の上に延びた登山道の連続であった。土の地面と違って石の上は足跡が残りにくく、残雪が溶けた直後ということもあり登山道が分かりにくい場所もあるが、目印が導いてくれる。全体として急な登りできつかったが、これで最後だと自分に言い聞かせて頑張って足を動かし続ける。

 登山道沿いに丸太が見られる様になれば山頂直下で、すぐに針ノ木岳山頂に到着した。冷たい北西の風が吹きつけており、山頂の岩陰で防寒装備を追加。風はあるが先週と違って雲は無く日光が降り注ぎ、北アルプスの山々もすっきり見えていた。今シーズン初めて八ヶ岳や南アルプスも見ることができた。

 もう日の出から1時間くらい経過しており周囲の山々も十分に明るくなっている。奥日光の山々が見えるか期待していたが、東の空は背の高い雲海に覆われて志賀高原の山々は完全に雲に没しており、見えているのは浅間山のみだった。その右側には少し離れて八ヶ岳、富士山、南アルプス、中央アルプスが雲海から突き出し、その右側からは北アルプスが連なる。常念山脈、穂高、槍ヶ岳、乗鞍岳、野口五郎岳、鷲羽岳、水晶岳、赤牛岳、薬師岳、越中沢岳、五色ヶ原、獅子岳、鬼岳、龍王岳、立山、剱岳、毛勝山、滝倉山、駒ヶ岳と続いて黒部川を挟んで後立山へと続く。さすがに真夏に登るよりもこの時期の方が空気が乾燥して展望がよく、今までの中で最高の展望と言えよう。

 今の時期はまだ針ノ木小屋は営業していないのでこの時刻は山頂は無人。次の登山者がやってくるのは早くても1時間後くらいであろう。展望を楽しみながらのんびりと休憩した。

 今後の行動だがまだ時間があるので蓮華岳に向かうことにした。この天気ならしばらく展望が楽しめそうで、過去に蓮華岳に登った時には夏場のお昼近くでガスに巻かれて展望が悪かった記憶しか無く、ろくな写真が撮影できなかった。今回はまともな展望写真が得られそうだ。

 約30分の休憩で出発。針ノ木岳から下り始めると最初の僅かな距離だけ夏道が出ているがすぐに残雪が現れるのでアイゼンを装着してピッケルを手に持つ。残雪期のこのルートは歩いたことがあるので様子は分かるし、雪の上にはトレースが付いている。標高2770m付近までは普通の雪稜歩きだが、その先は雪庇になりかけているのか雪壁状の急な下り。右手のハイマツとの境界を迂回する手段もあるがアイゼンを外すのが面倒なのでトレースに従って雪壁を下ることに。ここだけはバックで下る傾斜だが、まだ早朝で雪が固くアイゼンの刺さりが浅いのでピッケルを併用してトレースの窪みも利用して慎重に下った。

 2760m峰のトラバースは最初は緩やかだが最後は急で、島状の短いハイマツの上端を掠めて再び急な下り。標高2700m付近ではいったん傾斜が緩むがその先は稜線上の岩場を避けて再び急な北斜面のトラバース。これを終えればもう危険地帯は無い。針ノ木峠付近まで下ると完全に夏道が出ていた。そして雪に埋もれた針ノ木峠では単独男性がちょうど雪渓から上がってきて私とは入れ替わりに針ノ木岳へと向かっていった。峠から見る針ノ木雪渓は傾斜の関係で奥が見えないので他に登山者は無し。ヤマクボ沢も上部しか見えないが人影は無かった。針ノ木小屋はまだ営業していないが、小屋東面にある入口から南側はもう雪は消えて出入りに支障はないだろう。

 針ノ木峠手前から蓮華岳方面を見るとナイフリッジになっていて、またアイゼン、ピッケルが必要かと思ったら、夏道はずっと南側の雪が無い斜面を上がっていて結果的には峠から蓮華岳へはアイゼンは不要だった。一般論として東向きの尾根は遅くまで雪が残り、西向きの尾根は早く雪が消えるが、針ノ木峠から針ノ木岳、蓮華岳もその例に該当していた。

 雪が消えたハイマツの斜面は夏場はコケモモ、シラタマノキ、アカモノ等の花が見られるが、今回は早くもコケモモの花が咲いていた。森林限界で咲く花を見たのは今年初めてだ。道端の古い残雪の脇には僅かに積もった新雪があってびっくり。まだ雪が降る気温ではほとんど花が咲かないのは当然だろう。

 高度を上げるとハイマツの高さが徐々に低くなってやがて地を這う高さになる。砂礫が目立つ斜面になると夏場はコマクサがたくさん見られる場所だが、今は全くその姿は無い。2754m峰と2750m峰の間の鞍部には残雪がたくさんあったが傾斜が無いのでアイゼンは不要だった。2750m峰から僅かに下って2730m鞍部から北側の大沢を見下ろしたが、傾斜の関係で沢の大部分の区間が見えないので、上から下まで完全に雪がつながっているのか分からなかった。

 2750m鞍部から登り返した最初のピークは祠がある蓮華岳の西の肩で山頂ではないが、標高的には2798.7m三角点のある蓮華岳山頂とほとんど変わらない。西側の展望に関しては山頂よりもこちらの方が良好なのでパノラマ写真を撮影。三角点へと進んで風を避けて南斜面で展望を楽しみながら休憩した。間違いなく今まで蓮華岳に登った中で一番の展望であり、こちらでもパノラマ写真を撮影。贅沢を言えばもっと雲海が低くて東側に志賀高原や上越国境、奥日光、尾瀬、中越の山々が見えたらなお良かったのだが。

 蓮華岳から北葛岳へと向かう登山道には全く雪は見られなかった。蓮華岳東尾根にも稜線上には雪は無し。雲海は少し低くなったようで八ヶ岳の左側に見えている奥秩父の山並みの見える範囲が広がっていた。まだこの時刻でも蓮華岳山頂は無人のままであったが、午前8時前なので無理もないか。

 帰りは場合によっては大沢経由で下ろうかと考えていたが、稜線から沢の全体像が見えず雪がつながっているか不明だったのでリスクを避けて針ノ木雪渓経由で下ることにした。針ノ木峠に向かって下っていると3人パーティーと単独男性とすれ違った。単独男性はトレランと思われるほどの軽装で針ノ木雪渓をあれで登ったのか?と思ったが、針ノ木峠から少し上がった登山道脇にザックがデポしてあったのでその主だろう。3人組の方はアイゼンがデポしてあった。峠に到着してアイゼンを着用してピッケルを手にする。

 針ノ木峠から針ノ木雪渓を見下ろすと一人登ってくる姿あり。前回、残雪期にここを下った時には峠直下は怖いくらいの急傾斜に感じたが、今回はそれほどでもなく普通に前を向いて下ることができた。すれ違った男性は針ノ木岳を目指すとのこと。あまり雪に慣れていないようで歩く姿は腰が引けていたが、装備はしっかりしていたのでこの程度の傾斜なら経験を積めばすぐに慣れるだろう。

 ヤマクボ沢出合まで下ると登山者が一気に増えて山スキーヤーの姿も目立つようになる。スキーヤーを含めて大半の登山者は針ノ木峠ではなくヤマクボ沢へと登っていった。その後も点々と雪渓を上がってくる登山者とすれ違う。稜線上は冷たい風が吹いて防寒装備が必要だったが、谷底は全く風が無く強い日差しで体を動かしていると暑いくらいであった。半袖になり毛糸の帽子も脱いで今年初めて扇の出番となった。雪渓の途中の残雪の斜面では団体様が雪上訓練中。斜面を登ってピッケルでの滑落停止訓練をやっていた。

 往路で夏道から雪渓に乗った場所に到着したが、この頃には登りの登山者の姿は皆無となったが、このまま雪渓下流から上がってきた足跡が多数残っており、多くの登山者がまだ冬ルートで上がっていることを知る。よって私も帰りはこのまま沢沿いに下る冬ルートを進むことにした。

 事前にネットの記録を見たが冬ルートについて詳細が書かれたものは見当たらなかったが、地形図で篭川沿いに書かれた車道とその続きの破線がそうであろうと見当は付いた。実線の区間はおそらくまともな林道で篭川本流には橋がかかっていると思われるが、その先の破線部分で本流を渡る箇所は橋の存在は怪しく、ここの雪が消えると冬ルートも終了ではないかと予想した。

 雪渓の左岸側を下っていき雪が切れて流れが左岸に当たるところで左岸に上がって灌木が林立する中に続く薄い踏跡を辿る。まだ灌木は落葉したままなので歩きやすいが、葉が出たらかなり藪っぽくなりそうだ。踏跡もかなり薄く道とは言えないレベルで、歩きやすいところを適当に下っていく。

 やがて大きな砂防ダム上流側に出る。当然ながらダム堰堤の下流側はコンクリートの垂直の壁のはずであり下れないので左右どちらかで堰堤を高巻きする必要があるが、今は左岸にいるので左岸から高巻き。ここには踏跡があり冬道として歩いている人があることが分かる。

 堰堤を越えてもこれまで同様に灌木藪が目立つ河原のような平坦地に僅かな踏跡が続くが、標高1650m付近から廃林道っぽくなり地面に置かれた石にピンクリボンが巻かれた目印が登場。明らかに冬道の目印だろう。既に地形図上の破線に入ったはずだが予想通り廃林道であった。

 踏跡は廃林道を忠実に辿っていて、廃林道が左岸から右岸へ渡る箇所で冬道は右岸側へ移動するがここには橋は無く、久々に現れたスノーブリッジで対岸へ渡った。よってここの雪が消えたら今まで歩いてきた左岸には渡れないが、右岸の雪の上には右岸側をそのまま遡上する明瞭なトレースができていて、私が歩いてきた左岸よりも右岸コースがメインらしかった。これなら本流を渡る必要が無いので遅くまで針ノ木雪渓末端まで達することができそうだ。それに夏道より下流側は谷の幅が広くて流れから離れた場所が崖で通過できないなんてことはなさそうだ。

 右岸へ渡ってからは明らかにトレースが濃くなり、残雪の量も比較的多くて半分程度は雪の上を歩けた。ただし右岸側は左岸側より灌木藪は薄いので雪が無くても問題なく歩けそうだったが。

 砂防ダムの堰堤上に斜面が崩落した土砂が堆積した砂防ダムの上流側には梯子が横たわっていたが用途は不明。堰堤の縁と地面の高さに大きな差は無いので堰堤を越えるのに梯子は不要であったが、堰堤の下流側は1mくらいの段差があり、設置してあった短い梯子が役立った。

 堰堤を越えると僅かな残雪を斜めに下ると林道に乗る。地形図ではこの堰堤から破線から実線に変わっているがその通りであった。あとは明瞭な林道を下って行けば良いいようだ。ここで初めて登山道の標識が登場した。

 もう周囲に残雪はなく、花を探しながら歩くとミヤマキンバイに似た葉と黄色い花はキジムシロだろう。これは舗装道路脇にもたくさん咲いていた。紫色のスミレはタチツボスミレだろうか。これもあちこちに多数あり。開花前の赤っぽい蕾は帰宅後にネットで調べたらベニバナイチヤクソウらしかった。開花は来週だろう。地面に張り付くように咲いている苺の花はおそらくノウゴウイチゴだろう。

 林道は立派な橋で篭川を渡って扇沢ゲートから関電トンネルへ繋がる舗装道路へ出た。ここは入口に立っている土地用途の標識から往路で見た林道入口であった。あの時に高度計の校正のミスに気付けず残念。まあ、次回の機会にここから歩こう。

 この後は夏道と同じく車道をショートカットできる場所はショートカット。登山口近くの樹林帯ではニリンソウがたくさん見られた。ニリンソウよりずっと小さな白い花をたくさんつけたのは帰宅後の調査でヤマルリソウとのこと。これもたくさん咲いていた。他にも数種の花が咲いていたが、高山植物ではなく山野草の分野は種類が多すぎて、大雑把な分類が分からないとネットで調べるのも難しい。

 登山口を通過して有料駐車場脇の車道を下るとスズランの花あり。自生しているのではなく人の手で植えられたものかもしれない。その近くに紫色の花を付けた蘭の仲間と思われる花があったが、調べた結果、葉と花の形状、開花時期からノビネチドリが最有力候補だった。

 夏の観光シーズン前だからだろうか、有料駐車場は最上段が埋まっている程度で満車には程遠い状況だった。しかしその下の無料駐車場は完全に満車。登山者だけでなく観光客でもこの駐車場の存在を知っている人の中で、多少余計に歩いてもいいと考える人は無料駐車場を利用するからだろう。夏のハイシーズンの週末にもなれば無料駐車場はもちろん有料駐車場までも満車になって、ずっと下にある駐車場からシャトルバスで扇沢に上がることになる。

 着替えを済ませて駐車場を出たが、この時刻に駐車場を出るのは私だけ。扇沢のすぐ下の爺ヶ岳登山口である柏原新道付近の駐車場はがらがらで計10台程度しか車は無かった。まだ夏道は雪に埋もれて開通しておらず、藪っぽい冬ルートである爺ヶ岳南尾根を使わざるを得ないので、針ノ木雪渓が使える針ノ木岳とは大きな差であった。針ノ木雪渓から見た南尾根の西斜面はまだ多量の残雪に覆われていて、一般登山者が柏原新道を安全に通行可能なほどに雪解けが進むのは6月終わりくらいかもしれない。種池山荘が営業開始すれば危険個所は雪切してくれるが、残雪が多いと小屋明けが例年より遅れるかもしれない。と思ってネットで調べたら今年の小屋明けは7月1日からとのことで、例年より2週間近く遅かった。

 

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